あなたと恋の始め方①
 大好きな人からのそんな言葉に赤面しない女の子はいないと思う。私も類に漏れず赤面する。でも、車の中は少し薄暗いので私がこんなにも赤面…耳まで赤くしているのを小林さんに見えないはず。

「はい。楽しみにしています。じゃあ、おやすみなさい」

「俺も。おやすみ」

「送ってくれてありがとうございました」

「いいよ。俺も会えて嬉しかった」


 私が降りようとすると、左腕がスッと小林さんの方に引き寄せられ、私の身体も引き寄せられて…。私の身体はそのまま小林さんの胸に抱きしめられていた。一気に身体の真ん中が熱くなる。あまりの熱さに顔も真っ赤になる。今なら多分、薄暗い車内でも確実に赤面した私が見えるはず…。


「おやすみ。美羽ちゃん」


 私は恥ずかしさに小林さんの胸で頷くと私の身体を包む腕が緩み、至近距離に小林さんの綺麗な顔があった。どちらかが身体を少し動かせば…。吐息だけでなく唇まで触れてしまいそうなほどの近さ。ドキドキも止まらなくなる。だけど、小林さんはスッと身体を私から離す。そして、私の方を見つめるといつもの優しくて穏やかな微笑みを浮かべていた。


「今日は会えて嬉しかった」


 それは私の台詞。会えて嬉しかったのは私の方。送って貰うだけで申し訳ないと思うほどなのに、嬉しくて幸せでもっと小林さんの事が好きになってしまった。これ以上好きになれないと思うのに、その上を越えてくる感情に私は翻弄されていた。
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