あなたと恋の始め方①
 グレーのワンピースにレギンス。それにカーディガンを羽織る。遊園地ならボトムはズボンの方がいいのかもしれないけど、少しでも可愛いと思われたい私はワンピースとレギンスをチョイスした。でも、グレーのワンピースに黒のレギンスは…とてもシックと言えば言葉はいいけど、地味だとも思った。せめてワンピースに柄でもあればよかったのに、無地だった。 


 それでも少しは可愛いと思って欲しくて髪を少し上げてみた。いつもは後ろで一つに結ぶだけなのに、今日はそれを少しだけ巻き上げて、シュシュで飾る。これだけでも少し華やかになった気がする。


 少しでも綺麗に可愛く見られたいと思う女心は私にもきちんとあったみたいで、鏡の前で何度も何度も自分の姿を映してみる。化粧は…普通通りのしか出来ないから、せめてシュシュくらいは着けようと思った。


 用意が終わったのはそれからすぐで時間は八時になっていた。駅までは10分くらいしか掛からないから、30分を過ぎたくらいに出れば問題ないけど、マンションにいても緊張するだけなので早々に出掛けることにした。


 昨日の夜はアスファルトしか見ることが出来なかったのに、今日はいつもの見慣れた風景が違って見える。なんか魔法の粉が振りまかれたかのようにキラキラして見える。それは単純に私の心が高揚しているせいだと思う。


 小林さんとの初デートは…私の足取りを軽くしていた。駅に着いたら、カフェで少しゆっくりして、深呼吸してから小林さんに会うことにするのがいい。きちんと今日誘ってくれたお礼と、楽しみにしていたことも言わないといけない。

< 228 / 403 >

この作品をシェア

pagetop