あなたと恋の始め方①

デートって甘い

 そんな私の様子を小林さんは嬉しそうに見ていた。優しい眼差しを感じながら、ケーキを口に運ぶ。恥ずかしいのに嬉しいと思ってしまう。美味しいのに少しだけ味がぼやけて感じるのはケーキに集中できてないからで私の意識の半分は小林さんに向かってしまう。


 その綺麗な瞳に私はどのように映っているのだろうか?とか少しは可愛く映っているだろうかとか?考えても仕方ないことを次々に頭に浮かんでくる。


「こっちも食べてみて美味しいよ」


 そういって差し出された小林さんのフォークの上に乗った一口分のケーキに私の視線は注がれる。これってどうしたらいいのだろうか?フォークをそのまま借りて自分で食べるのか?もしかしたら『あーん』という高等技術を私に求めているのだろうか?


 でも、どうしていいか分からなくて躊躇していると、小林さんはクスクス笑い、フォークを私の方を差し出した。これはどう見ても高等技術の方……。私の口元にフォークはゆっくりと近づいてくる。


「口開けて」

「……。」

 
 どこかのカフェで恋人同士と思われる二人が甘い世界に浸りながら、今の小林さんの行動と同じようなことをしていた。こんなところでと思いながらも、前にいる愛する人しか見えないから、人のいる場所でこういうことが出来るのだろうと思ったのを思い出す。


「ほら落ちるよ。美羽ちゃん。口を開けて」


 そんな小林さんの言葉に私は一瞬身体が固まり、あんなに頭の中でグルグル回っていた思考が一気にストップした。

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