あなたと恋の始め方①
 焦りの中、パニックに陥りそうになる私とは対照的で、小林さんは全く普段の様子と変わらない。でも、いつもと違うのは私が小林さんの攻撃に動揺しているのを分かっているはずなのに、今日は助け船を出してくれる気配はない。覚悟を決めないといけないのだろうか?


 自分の前に置かれているケーキを一口分、フォークに乗せると、フッと息を吐いた。そして、落とさないように小林さんの前に差し出す。緊張しすぎて手が震え、もう少しで落ちちゃうという時に小林さんは私の手をキュッと掴むと少し引き、自分の口にケーキを入れたのだった。


 フォークを口に入れる時に、ケーキのクリームが上唇に付いてしまったけど、それをペロッと舌で舐めると、無邪気な笑顔を私に向ける。結局は私は自分では何も出来なかった。それでも、小林さんは嬉しそうに笑っている。そんな顔を見れただけでいいと思う私がいた。


「今まで食べたケーキで一番美味しいよ」


「そうですか?」


「うん。美味しいよ」


 そういう嬉しそうに笑うので、私も嬉しくなってしまった。好きな人が笑ってくれることがこんなに嬉しいなんて…。心が温かいものに満たされているのを感じていた。


 ケーキを食べていると、キャストの人がやってきたのを見計らって小林さんは声を掛けた。


「すみません。写真を撮って貰えますか?」


 キャストの人はニッコリと笑い、小林さんの手から携帯を取ると私と小林さんの方を向いてニッコリと笑った。


「すみません。もう少し近づいてくれないと入りません」
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