あなたと恋の始め方①
 フランス交換留学というのは研究員にとって夢のような機会で研究員なら誰もが憧れるものだった。


 仕事と恋と…。私はどちらかを選ばないといけない。その時期は来週に近付いている。私は小林さんにこのことを話さないといけないけど、付き合いだしてすぐの今、そんなことを言われたら小林さんはどう思うだろう。そんなことを考えていると、手に袋を持った小林さんが戻ってきた。私の目の前に立つとニッコリと笑って袋の中を私に見せた。


「夕食は又後ですることにして、その前にこれを食べよう」


 買ってきてくれたのはカットピザとジュース。少し行ったところのワゴンで買ってきてくれたのだろう。普通に考えて、二人で食べるには多すぎる量だけど、きっと小林さんの食欲なら完全に綺麗になるだろうと思う。小林さんは私の横に座ると、袋の中からピザを取り出し、私に手渡す。まだ熱々で美味しそうなチーズにとろっと流れた。


「美味しそうです。でも、零れちゃう」


「やけどしないように気を付けて。美味しいといいんだけど。でも、ショーが終わったらどこかでキチンとした食事をしよう。さすがにこれじゃ足りないよね」


 小林さんはそういうけど、私には十分な量だと思う。足りないことないと思うけど…。でも、小林さんが足りないよりはいいと思い頷いた。小林さんから貰ったピザはとっても美味しくて自分が小林さんほどではないけどお腹が空いていたのだと気付く。


「そろそろみたいだね」


 そんな言葉に視線を上げると、目の前にいる人たちのざわめきが大きくなってきていて、ショーの始まりを予感させる。そんな光景を見ながら私はドキドキし始めていた。
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