あなたと恋の始め方①
 小林さんからの連絡を取り損なわないように自分のバッグから携帯を取り出すと、新着メールが届いていた。私の携帯にメールしてくるのはごく限られた人だから、誰かと思ってそのメールを開くとそれは折戸さんからのメールだった。普段ならパソコンのメールアドレスに送ってくるのに、今日は私の携帯にメールを送ってきたのは何故だろうと思ったけど、もしかしたら緊急の内容かもしれないと思って画面を見つめ、私は溜め息を零した。


『明日の午後の便でフランスに帰ることになったよ。今度会う時まで元気で』



 用件だけを伝える短いメールだった。もう少し長く日本に居るかもしれないと思っていたのに、そうは出来ないのが折戸さんはフランスで仕事が待っているからだと思う。そして、急に戻ってくるのは現実。私は来週までに交換留学のことを決めないといけない。


 小林さんと付き合いだして、初めてのデートで浮かれていた私はすっかりフランスの交換留学のことを忘れていた。中垣先輩は私が留学の本命だと言っていた。高見主任が態々来てくれたのも本決まりに近いからそれを止めたいなら自分が助けるということだった。


 高見主任と折戸さんと話した時はまだ迷っていたけど、私の気持ちは断る方に傾いている。それは小林さんと離れたくないと思う気持ちからで私は研究員の仕事よりも小林さんとの未来を選ぶつもりだった。それなのに、気持ちは断る方に傾いているにも関わらず、最後の決断できないのは私が研究という仕事に心血を注いできたからだった。
< 275 / 403 >

この作品をシェア

pagetop