あなたと恋の始め方①
 今までの私は勉強だけをして過ごしてきた。学生の時は勉強だけど、社会人になってからは研究だけ。そんな自分でも面白みがない人間だと思うけど、小林さんは好きだと言ってくれる。小林さんと出会い、恋をして。自分の中に生まれる気持ちにドキドキしながら、新しい私が生まれるような気がしていた。


 私は今の自分も好きになりつつある。


「美羽ちゃん。そんなにがっかりした顔をしないで。また一緒に来よう。俺が何度でも美羽ちゃんをここに連れてくる」


 小林さんの言葉に感じる強さを嬉しく思う私が居た。『何度も』という小林さんの言葉には二人で重ねる時間がたくさんあると言っている。それは私も望む未来でもある。


「今日はありがとうございました。とっても楽しかったです。また、一緒に来たいです」


「俺も。美羽ちゃんの何倍も楽しかった」


 そう言って微笑む小林さんの笑顔に私はドキッとした。今日何度こんな風に心臓が飛び跳ねたのだろうか。そう思うほど、小林さんの言葉に笑顔にドキドキする。何度も飛び跳ねる心臓に私は自分がこんなにも小林さんが好きだということを実感する。


 今日一日で私は今まで以上に小林さんのことが好きになっていた。


 ふと気付くとさっきまでたくさんいた人は疎らになっている。私はかなりの間、目に前に広がる綺麗な風景に見とれていたみたいだった。


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