あなたと恋の始め方①
「明日の朝にもう一度来ますので大丈夫です」


「そんな大事な用事なんだね。折戸さんを見送るの」


「え?」


 小林さんの言葉に一瞬息が詰まるかと思った。見上げると小林さんは穏やかな微笑みを浮かべていて、怒っている様子もなくただ、いつものように優しい微笑みを浮かべている。


「さっき、明日帰るって俺にもフランスに帰国するってメール着てたから、美羽ちゃんのことだからきっと見送りに行くのだと思っていた。どうして隠したりするの?俺が怒るとでも思った?」


「見送りというか…。折戸さんに会うのはどうかと思うので、乗っている飛行機だけでも見送ろうかと思ってました」


 言いながら自分の語尾が小さくなっていく。


「飛行機だけ見送ってどうするの?俺も一緒に行く。飛行機なんか見送るんじゃなくて、二人で折戸さんを見送ろう」


 そう言いながら、小林さんは私の手をキュッと握る。大きな手に自分の手が包まれると私は小林さんを見上げた。確かに折戸さんを見送りたいけど、それに小林さんに付き合って貰うのは気が引ける。


「でも、あの」


「大丈夫。折戸さんは俺たち以上に大人だから。俺と美羽ちゃんが一緒に来ても大丈夫だよ」


 折戸さんはそうかもしれないけど、私が気になるのは小林さんの方。私が折戸さんを見送るのに嫌な思いはしないのだろうか?私は小林さんに少しでも嫌な思いをさせたくなかった。

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