あなたと恋の始め方①
「怒ってないんですか?」


「怒っているよ。とっても。だって美羽ちゃんが一人で行くとかありえないよ。静岡と東京を往復するとかキツイだけでしょ」


 そう言って小林さんは無邪気に微笑んだ。小林さんが怒っているというのは、折戸さんを見送ることじゃなくて…私が一人で往復すること??


「一緒に泊まろう。俺も折戸さんを見送りたいし」

 
 そう無邪気に言う小林さんの言葉に私の身体は一瞬で硬直した。何も言えないで居る私に小林さんは言葉を続けた。小林さんの口から零れる言葉に驚き過ぎて息が止まりそうになる。


「泊まるのは都内がいいよね。空港沿線の…。流石に美羽ちゃんがいるのに、高見主任のマンションってわけにもいかないし」


「高見主任のマンションですか?」


「ああ。俺さ、たまに東京出張がある時、高見主任のマンションに泊めて貰ったりしてるんだ。広いし綺麗だし、便利はいいし。でも、流石に二人は高見主任も困ると思うんだよね。ちょっと時間も遅いし。さてと、どこに泊まろうかな。この時間からだったら、あんまりいい部屋は残ってないかもしれないからそれは覚悟してね」


 高見主任のマンションにお世話になるなんて困る。こんな夜にいきなり訪問するなんて非常識は出来ない。でも、小林さんの口調からすると出張の度に高見主任のマンションにお世話になっているようだった。小林さんと一緒にホテルに泊まるだけでも自分の中でどうしようと思うくらいなのに、高見主任のマンションとか緊張しすぎて眠れないと思う。
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