あなたと恋の始め方①
 それならまだ静岡と東京を往復した方が身体はキツくても気持ちは楽だと思った。でも、こんな時間から泊まれるホテルってあるのだろうか?


「さあ、行こうか。美羽ちゃんも疲れたよね」


「大丈夫です」


 手を繋いだまま、歩こうとすると、又、手は解かれて、また腕に手を引かれていく。そして、小林さんの腕に私の腕は絡められる。グッと縮まった距離にドキッとしながら、小林さんを見つめると「俺はこっちが好きかな」と言って無邪気に笑って歩き出した。そんな小林さんの腕に身体を寄せるようにして、私も歩きだしたのだった。


 人が疎らになったとはいえ、周りにはたくさんの人で溢れている。私はそのたくさんの人も目に入らない。頭の中はさっきの小林さんの『宿泊』発言で軽いパニックになっている。彼氏いない暦=実年齢の私にしては『初めてのデート=一緒にお泊り』なんか構図はなくて、どうしていいか分からない。


 でも、高校生ならともかく、私と小林さんはれっきとした社会人で付き合っている。それにお互いに一人暮らしだから、泊まっても不都合はない。緊張する思考が迷走して考えが纏まらないのは身体が疲れているからだろうか?それとも私の恋愛スキルの低さからオーバーヒートどころか焦げ落ちたのかもしれない。


 本当にどうしたらいいのだろう?泊まるのは嫌ということはない。でも、緊張してしまう。


「止めた」


「え?何がですか?」


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