あなたと恋の始め方①
「綺麗」


 そんな言葉を零しながら私は目の前の綺麗な光景に引き寄せられる。そんな私の横で小林さんも光景を見つめていた。ふと我に返り、横にいる小林さんを見ると、私以上に真っ直ぐな視線を遊園地のお城に向けていた。

「本当に綺麗だね」


 窓から見える眩い光景を見つめていると、横にいる小林さんがフワッと私の身体を後ろから抱き寄せたのだった。いきなりの行動にドキッとするけど、やっぱり嬉しくて…。身体に感じる温もりの優しさを感じながら私は綺麗な光景を見つめていた。


「気に入った?」


「よかった」


「なんか夢見たいです」


「そう?俺は夢だったら嫌だな」


 
 そんな言葉と共に小林さんの腕の力は緩み、私の身体は自由になる。どうしたのかと後ろを向くと、小林さんは私の髪に指を絡め、後頭部を自分の方に優しく引き寄せた。驚いて目を見開く私に小林さんは耳元で囁く。


「美羽ちゃん。目を閉じて」


 その言葉に誘われるように目を閉じると、唇に柔らかく温かくなる感触を覚えた。触れる唇の温かさは徐々に熱を込めていく。キスをしながら心の奥の残っていた何かがスルリと綺麗に溶けていくのを感じた。


 心も身体も…。
 小林さんを好きだと言っていた。



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