あなたと恋の始め方①
 ドアが開いたと同時に部屋の照明が灯る。自動点灯したライトは部屋の奥の方まで視界を開かせる。そこには私の想像以上の広い空間が広がっていた。私は目の前に広がる空間に息を呑む。その広い空間には大きなベッドがあって、それは一台しかない。小林さんと一緒に居たいと思い、望んだのは私だけど、それでも、全くこういう経験のない私が焦らないはずはない。


 二人で使うように用意されたベッドには勿論大きめの枕が二つ並んでいる。真っ白なシーツに包まれたベッドは清潔そのものでドキッとしてしまった。部屋には重厚な木製のチェストや応接セットなどもあるけど、私が目の前にあるベッドに視線が囚われたままだった。小林さんがツインの部屋はなかったからダブルと言っていたけど、それでも、想像するのと実際に目の当たりにするのは違う。


「美羽ちゃん。こっちにおいでよ」


 小林さんはそういうと窓辺に向かって歩いていき、さーっと勢いよくカーテンを開けた。一気に開けた視界に私は驚いた。この部屋は最上階ではないけど、それでも高層階であるのは間違いない。エレベーターでかなり昇ってきたからある程度は想像していたけど、眼下に広がる世界は私の想像以上だった。


 真っ暗の空間にさっきまでいた遊園地のお城が綺麗にライトアップされ、それだけでも綺麗なのに、その周りもまだ輝きを残している。まだ、今日という楽しい一日が終わってなかったように感じた。

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