あなたと恋の始め方①

そんなあなたが好き

 私は小林さんに言われたとおりに買ってきた袋の中から、飲み物とかを冷蔵庫に入れ、お菓子とかはテーブルの上に置く。自己主張の強い箱は…どうしようかと思って、悩んだ末に袋に入れたまま、少し離れたところに置いてある一人掛けのソファの所に置いた。


 バスルームの方から微かに水音がする。ドアの隙間から微かに漏れる音にドキドキが止まらなくなる。小林さんがシャワーを浴びていると思うと、急に緊張してきて、緊張する自分をどうにかしたくて、窓辺のソファに座った。すると、目の前にさっきのコンビニの袋が目に入ってしまい、もっと緊張してしまう。


 フカフカで豪華な造りのソファに座るとゆっくりと身体が沈むほど柔らかくて、普通ならリラックス出来る筈なのに、今のこの状態では私の心臓が落ち着く気配はない。きっと今、内科の先生が私の胸に聴診器を当てたら、あまりの音の大きさに驚き精密検査をした方がいいというに違いない。


 ただ、座っているだけでこんなにも緊張するし、これからの自分がどうなるかを考えてしまう。普通の恋人同士ならこの先にあるのは想像するだけでも恥ずかしくなってしまうようなこと。小林さんが健全な大人の男の人なのだからそれが当たり前だと思う。


 小林さんと重ねた時間は十分なもので…。決して早いわけではない。出会ったその日に抱かれる人も居るというのだから、私と小林さんが肌を重ねることになっても可笑しくない。こういうところが自分の中での融通の利かないところだと思う。


 小林さんは私の一番好きな人。

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