あなたと恋の始め方①
 ソファの上にあるコンビニの袋の端から見えるのは真っ黒な箱にショッキングピンクやラメのピンクのハートが散りばめられている明らかにソレと分かる代物。小林さんの意思表示。


 小林さんは私のことを好きだと言葉にも行動にも移してくれている。その気持ちは鈍い私でも分かるほどだから、普通の女の人なら溺愛されていると感じるレベルなのかもしれない。


『小林さんに抱かれる』


 それは普通の恋人同士なら当たり前に迎えることだと思う。経験がないから分からないけど、大好きな人の一番近くに行かれるのだから、きっと幸せに包まれることなのだと思う。愛されるということは嬉しいのに、でも、怖いという複雑な気持ちが交互に襲ってくる。


 窓辺に居る私は気持ちを落ち着けようと窓から見える光景に視線を流しても落ち着く気配はない。一層身体は堅くなっていくし、緊張しすぎて喉が渇いて仕方ない。私は冷蔵庫の所まで行き、さっきコンビニで買ってきたスポーツドリンクを取り出すと、キャップを開け、ゆっくりと口を付けた。


 冷たいものが喉を流れていくのを感じ、次第に胃の辺りも冷たくなる。胃は少し冷えたのに、私の心臓は一向に落ち着きをみせない。


 深呼吸もしてみた。
 でも、ドキドキは止まらない。



 半分くらいに減ったペットボトルを見て、溜め息を零す。喉の渇きが癒えただけでもいい。


 そう思うことにした。
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