あなたと恋の始め方①
「特に無いです」


 折戸さんの見送りが終わったら何も用事がない。後は静岡に戻るだけとなっている。身体のことを考えると明日は仕事が待っているから少し早目に自分の部屋に戻れたら嬉しいとは思う。でも、小林さんと一緒に居たいとも思うから複雑だった。


「じゃあ、今日も俺と一緒でいい?」


 私も一緒に居たいから断る理由なんかない。


「一緒がいいです」


 小林さんは嬉しそうに微笑むと、ちょっと首を傾げて、私の唇にちゅっと自分の唇を重ねた。昨日、何度もキスをしたのに、今日もまだ私の心臓は収まる気配を見せない。


「やっぱり足りない」


 そういうと小林さんは私の身体を逞しいその腕で抱き寄せるとさっきよりも深く唇を重ねたのだった。何回も何回も私たちは唇を重ね、その度に私は心臓が飛び跳ね…。幸せで幸せで…。何も考えられなくなる。


 何度目かわからないくらいのキスの後、小林さんがちょっと困ったような顔をした。


「このままだったら、ずっとキスが止まらないから、先に食事に行こう」


「はい」


 キスが止まらないって…。恥ずかしくなるけど、でも、私も小林さんの言葉が無かったら、そのまま小林さんの腕の中ずっとキスをしていたかもしれない。小林さんと居ると私は恋愛体質に作り替えられる気がした。


「美羽ちゃんはお腹空いている?」


「そんなに空いてないです。でも、目の前にしたら食べれると思います」

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