あなたと恋の始め方①
第四章

恋と現実

「じゃ、とりあえず行こうか」


 二人で向かったのはホテルのレストランでよくあるタイプのビュッフェタイプだった。ここなら好みに合わせて色々食べることも出来るし、小林さんはよく食べるからビュッフェがいいだろう。


「美羽ちゃんはここでいいの?」


 ホテルにはたくさんの店がある。でも、このレストランの吹き抜けの開放感が気持ち良くて、ここがいいと思った。明るい光の中で迎える朝を満喫したい。そして、係りの人に案内されたのは窓際の席でそこからは綺麗に整えられた庭が大きなガラス越しに見えていた。解放感溢れる席に座ると、顔が緩む私がいる。目の前には大好きな人がいて、こんな幸せな朝は初めてだった。


 係りの人が言ってしまうと、小林さんがフッと笑った。


「嬉しい?」


「わかります?とっても嬉しいです。この席って見晴いいし。それに…。」


「それに?」


「小林さんが笑っているから」

「俺も嬉しいから。さ、料理を取ってこよう」

 
 立ち上がると小林さんは私の手を握って歩き出す。人がいるのに手を繋いで歩くことがそんなに抵抗なくなっている自分に驚く。周りが見えなくなるのは恋の一つの現象かもしれない。私は少し前を歩く小林さんにだけを見つめていた。

< 347 / 403 >

この作品をシェア

pagetop