あなたと恋の始め方①
 広いレストランの中、私は真っ白な大きな皿を持って小林さんの後ろを歩く。並ぶ料理の数々にお腹は空いてないと思っていたのに、それなりにそそられるものがあって驚く。サラダにハムに卵にスープ。洋風に和風に中華風のおかゆなんかもあって、バラエティも豊かだった。 


「迷っちゃう」


 そんな私の呟きに小林さんはクスクス笑う。小林さんはというと、料理の前を歩くたびにお皿の上の料理が増えていく。それこそ、全種類制覇の勢いだった。私も色々食べたいとは思うけど、それは無理だから食べれるものを食べれるだけを選んでいく。悩む私の上からクスクス笑う声が聞こえ、見上げると、山盛りの料理をお皿に乗せた小林さんが私を見ていた。


「そんなに迷うなら、全部食べたら?」

「無理ですよ」

「そう?俺は大丈夫そう」



 テーブルの上に並ぶお皿にジュース。小林さんの前には私の取った分の三倍の量の料理が並んでいた。おいしそうだと思うけど、そこまで食べれない。


「ズルい。私も食べたいけど無理だもの」


「そう。量を減らして一口ずつ楽しんだら?」

「でも…。」

「じゃあ、俺の皿から味見すれば?」


 小林さんのお皿から味見??それはもっと無理。


「それなら、自分で取ってきます」


「遠慮しなくていいのに。さ、俺ももう少し取ってこようかな」


 小林さんは新しいお皿を持って歩き出す。私はというと、どうしても食べたいものだけを食べることにするしかない。


「さあ、いこっか。」


 そんな微笑みにつられるように私のお皿にはたくさんの料理が少しずつ並べられていた。
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