あなたと恋の始め方①
 私と小林さんの思いとは裏腹にドアは閉まり、ゆっくりと電車は動き出す。揺れの少ない車両はゆったりとした時間が過ごせそうだった。座ると感じるのは自分の身体が思ったよりも疲れているということ。あまり身体を動かさない私としては楽しいから疲れにも気付かなかったけど、座った途端にドッと疲れが押し寄せてきた。運動不足なのを一段と感じる。


 車窓から見える風景は凄い勢いで流れていて、一日の終わりを小林さんと一緒に見つめていた。


「夜になったね。遅くなったけど大丈夫?」


「そうですね。研究所を出る時はいつもこんな夜になってますから」


「美羽ちゃんは研究熱心だね。研究職って面白いの?俺は座って仕事するのが苦手だから得意先を回っている方がいい」


「研究は面白いです。自分の予想を遥かに超える結果が出たりして、研究者としての自分の未熟さを感じます」


 自分の予想と違う結果が出た時に悔しいと思うと同時に未知への可能性に魅せられる。そうして私はこの道をずっと来た。もっと、新たな先を見たいと心から思う。


「そうかな?美羽ちゃんは凄いと思うけど。さ、まだ時間はあるから美羽ちゃんは寝てていいよ」


「どうしても眠くなったら寝ます。それまで話していていいです?」


「勿論。でも、我慢はしないで」


「はい」


 私は小林さんと話しながら時間を過ごしていた。


 最初は話していたけどいつしか私はゆっくりと眠りの中に入っていく。一生懸命、目蓋が閉じそうになるのと格闘するけど、それでもいつしか意識を手放していた。そして、次に目を開けたのは小林さんに身体を揺すられた時で、もうすぐ静岡に到着するという少し前だった。

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