あなたと恋の始め方①
「私。寝てましたね」

「俺も寝てたから一緒だよ。さ、降りようか」


「はい」


 静岡に着いたのはもう完全に日は沈んでいて、真っ暗になっていた。私とはマンションの方に向かう電車に乗り込むと目に入ってきた見慣れた風景に帰ってきたことを感じさせられる。見知った風景は安心するのに、それでいて、夢のような時間が終わった気がして寂しい。次は私のマンションの最寄駅。小林さんと離れる時間は目前まで迫っていた。


「美羽ちゃん。ご飯食べに行かない?」


 明日は月曜日。私の仕事も忙しいけど小林さんの仕事も忙しいはず、私の我が儘で小林さんが部屋で休む時間を奪っていいのか分からない。


「小林さんはいいんですか?明日仕事ですよ。疲れを取るためにマンションに戻った方がよくないですか?仕事忙しいのに、私と一緒に居たら疲れるでしょ」


「全然。美羽ちゃんと一緒にいて疲れることはないよ。それより、美羽ちゃんはどう?お腹空いてない?和風、洋風、中華風。それとも、インド風にエスニック風?どれがいい?」


 インド風にエスニック風が増えている。そんな小林さんの言葉に顔が緩んでいくのを感じた。まだこの楽しい時間はもう少し続く。


「じゃあ。……ロシア風で」


 私の言葉に小林さんは電車の中では大笑い出来なくて…笑いを噛み殺していた。


「そこでロシアが来るなんて。ボルシチ好きなの?それともピロシキ?」


「好きなのは…パスタです」

「それってイタリアンだよ」


 そういって小林さんは目尻に皺を寄せていた。
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