あなたと恋の始め方①
「さっき、折戸さんがお土産を持ってきてくれて…あの。その、メールにも気付かなかったです」


 焦る私に小林さんはニッコリと微笑んでくれる。そんな小林さんの微笑みを見ながら少しホッとしたのに、小林さんは私の頭を折戸さんと同じように撫でた。


 折戸さんと小林さんの行動は一緒なのに小林さんの方に私の心臓の音が煩くて、ドキドキが激しい。自分では見えないけど顔が真っ赤になっていると思う。それに気付かないで欲しいと思った。恥ずかしすぎる。


「大丈夫。心配しないでいいよ。ちょっと驚いただけだから。じゃあ、お邪魔します」


 そう言って小林さんはニッコリと笑って私の横を通り過ぎたのだった。


 私はキッチンでコーヒーの用意をしながら、ついリビングを見てしまう。女子力の薄い私の部屋には申し訳ないくらいの二人は楽しそうに談笑している。時折、微笑みながら折戸さんの醸し出すオーラのような空気は触れたら可笑しくなりそうなほど華やかで、小林さんはあの時の海を思い出すくらいに爽やかで清々しい。


 そんな二人の話す内容は仕事のことだと分かるけど、普段は研究所にいる私には全く分からなかった。製品ならともかく営業成績は全く分からない。営業一課にいたとはいえ、一年も離れるとその内情は変わっている。


 それに折戸さんはフランス支社の話をしている。あの時から時間は確実に流れている。でも、折戸さんも小林さんも変わらない。



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