あなたと恋の始め方①
 コーヒーを用意し終わってリビングに行くと、二人掛け用のソファには折戸さんが座っていて小さなガラスのテーブルを挟んだ右側のフローリングには小林さんが座っている。左側は狭くて座れない。


 座るなら、折戸さんの横か、小林さんの横。


「美羽ちゃんはどこに座るの?ソファに座る?何なら、俺の膝の上でもいいよ」


 ニッコリとして言うから、冗談か本気か分からない。冗談だと思うけど、今日の折戸さんはよくわからない。さっきもいきなり後ろから抱きしめられて…フランスに行って表現が大らかになったのかもしれないけど、それでもここは日本だし、恋愛経験が皆無に近い私にはハードルが高すぎる。


「小林さんの横に座ってもいいですか?」


「蒼空の傍がいいんだね。お兄さんは寂しいよ」


 折戸さんはいつ私のお兄さんになったのでしょうか?私に向けられる魅惑的な微笑みが緩やかに私の上に降り注ぎ、溜め息を零させる。この状態で膝の上に乗るという感覚が私には分からない。


「折戸さんの膝の上に乗るなんか言えないでしょ。普通の感覚なら」



 助けてくれたのは小林さんで、横に座る私のために場所を空けてくれる。触れるか触れないかの距離にちょっと心臓が跳ねる。一緒に食事を何度もしているのに、小林さんの傍にいると胸がキュンとしてしまう。それを隠すように目の前に置いたマグカップに入ったコーヒーを口に運ぶのだった。


「そういえば、美羽ちゃん。研究の方はどうなっているの?」

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