あなたと恋の始め方①
 そんな感じで、三人での食事が始まった。私はいきなりの展開であたふたしているのに、当の折戸さんも小林さんも談笑している。折戸さんは私の作ったハンバーグが気に入ったらしく、ご機嫌で、普通のハンバーグなのに恥ずかしいくらいに絶賛されても困ってしまう。


『普通のハンバーグですから』


 何度この言葉を口にしたのだろうかと思うくらいに折戸さんは絶賛する。折戸さんは美味しいお店をよく知っているし、何度も舌が蕩けるほどの料理を食べたことがあるだろう。それなのに、一般人の私の作ったハンバーグをこんなにも絶賛されると申し訳なさが私を包む。極々普通のハンバーグだと思う。別に…珍しい調味料を使ったわけでもない。


「いいお嫁さんになれるよ。美羽ちゃんと結婚したら幸せになれそうだ」


 そんなことを言われても…困る。さっきのプロポーズの事を急に思い出してしまい、固まる私を他所に、折戸さんも小林さんもハンバーグを口に運び続ける。


「本当だね。美味しいよ。」


 余りにも二人が普通で、私だけが焦っているのはズルイと思ってしまう。でも、私の揺れる気持ちには全く動揺せずに折戸さんも小林さんもハンバーグを食べ続けていた。食事をしながらの内容はやはり仕事のことが多く。小林さんは折戸さんのフランスの仕事のことを楽しそうに聞いている。


 こんな二人を見ていると本社営業一課で過ごした時間を思い出す。私の天職は研究員だと思うけど、本社営業一課の日々は…私のとっては刺激的で、広く世界が開かれた時でもあった。折戸さんの話は今は研究員になってしまった私にも分かりやすいように話してくれる。

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