あなたと恋の始め方①
 甘い言葉をを平然と言うから、私は顔が熱くなってしまう。多分、真っ赤になっていると思う。そんな私を小林さんはどう思うだろうか?チラッと視線を移してみると、小林さんは私の方をジッと見つめていた。

 こういう時にどうしたらいいのか、分からない。

 そんな私を助けてくれたのは折戸さんだった。窮地に陥れて、それなのに優しく助け出すかの如く。


「ごめんね。美羽ちゃんの気持ちも考えずに自分の気持ちを言って。でも、美羽ちゃんを大事だと思う気持ちからだから、許してね。」


「いえ、あの。許すとか…。」


「さてと、もう行かないといけないな。美羽ちゃんの作ってくれたハンバーグは美味しくて堪らなかったよ。来週、静岡に来るときには俺が美味しいものをご馳走するね。
 でも、美羽ちゃんが作ってくれた食事には敵わないだろうけど。」


 そういうと、スッと立ち上がった。時計を見ているから、時間が迫っているのだと思う。


「タクシーを呼びますか?」

「いや。大丈夫。駅まで少しだから、歩いて行くよ。」

「俺が車で送りますよ。」


 小林さんは立ち上がると、ポケットからキーケースを取り出し、私の方を見つめる。


「ちょっと行ってくるよ。」

「は、はい。」


「言葉に甘えて、蒼空の車で送って貰おうかな。
 じゃあ、美羽ちゃん。またね。」


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