あなたと恋の始め方①
「美羽ちゃん。お疲れ様」


 無邪気に微笑む笑顔が私に降り注ぎ、その笑顔に今日一日の疲れが癒されるのを感じた。大好きな人の笑顔はそれだけで威力を発揮した。さっきまで研究が上手く行かずに苦労していた疲れも一気に吹き飛ばす。疲れどころか幸せな気持ちに私は包まれている。


 小林さんだって仕事が忙しいのに、こうして態々会いに来てくれたのが嬉しい。本社営業一課では自分から会おうとしなくても机は隣だったので、苦労せずに会うことが出来た。でも、今は、こんな風に約束をしないと会えない。それなのに、私が会いたいと思う時は心を見透かされたかのように小林さんからの食事の誘いがあるのだった。


「お疲れ様です。遅くなってすみません。ずいぶん待たせたんじゃないですか?」


「待ってないよ。俺も仕事忙しかったし、でも、お腹空いたから早く何か食べよう。さすがにエネルギーが切れそう」


 無邪気に笑うその顔に、不意に中垣先輩の言葉が思い出された。確かに小林さんはお腹を空かせて死んでしまうかもと。


「お腹空いているなら駅で待ち合わせにすればよかったですね」


「女の子が夜に一人で歩くのは危ないでしょ」


 そう言いながら小林さんは、今歩いて来た道を戻り始める。食事をするなら駅の近くの方がいい。駅で待っていてくれてもいいのに、私を迎えに来てくれたことが嬉しいと思った。


「大丈夫ですよ。駅まですぐですから。それに私もお腹空きました。でも、どこにします?」
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