あなたと恋の始め方①
「駅前の居酒屋でいい?前に美羽ちゃんと行った時に食べたから揚げが美味しかった。今日はから揚げが食べたい」


「はい。じゃ、そこで」


「美羽ちゃんもそこでいいの?」


「はい。私もから揚げ好きですよ」


 一緒に入った駅前の居酒屋はどこにでもあるような店だった。小林さんと行くお店はいつも気取らない場所が多くて、この店も何回か来ている。でも、から揚げにはこだわりがあるらしく。素朴な味の中に鶏の旨味が滲みだし、小林さんでなくても夢中になりそうな味。十分に他の居酒屋と一線を画してる。


 扉を開けて中に入ると、そこには雑然とした勢いのある雰囲気が広がっていた。楽しそうな笑い声があちらこちらから聞こえてくる。思ったよりもたくさんの客がいて、席が空いているのか心配だったけど、座敷席は空いてなかったけどテーブル席はまだ空いていた。


 テーブルを挟んで座ると目の前に小林さんの笑顔があって、ドキッとしてしまう。こんな風に一緒に食事をするのはよくあることなのに、ドキドキしすぎて一向に慣れる気配はない。


「俺はビールだけど、美羽ちゃんは飲む?」


「ウーロン茶で。明日、研究が山場なんです」


「そっか。じゃ、ウーロンで」


 小林さんはニッコリと笑う。自分の心臓が素直すぎて困る。こんなに好きなのだと自覚する。あれから季節も変わったのに、私と小林さんの関係は変わらない。



 でも、傍にいれるだけで嬉しいのは私が恋をしているからだと思う。
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