あなたと恋の始め方①
「今回のフランスの研究所の交換留学の話は知っているか?あれに坂上さんの名前が挙がっている」


「え?」


 私は高見主任の言葉に絶句してしまった。水曜日にサラリと折戸さんが言っていたのは冗談じゃなかった。それにしてもフランスの研究所に留学だなんて…研究員としては異例の抜擢で、将来が開けるのは間違いない。でも、もしもフランスに行くとなると小林さんとも離れ離れになってしまう。今の状態で離れるということの意味を分からないわけではない。



 だから、今の私と小林さんの関係を聞いたのだろう。ただ、単に小林さんが可愛いからではなかった。私は自分のスカートをいつの間にか掴んでしまっていた。それにしても、本社営業一課から転属してきてまだそんなに時間の経ってない私がまた転勤?


「静岡研究所に来たばかりの私がフランスですか?」


「ああ。来たばかりだからだよ。独身で身軽だろ。ウチの会社は男も女もない。優秀な人材は成長するための機会を与えられる。でも、坂上さんが女の子なのにフランス研究所への赴任というのはかなり異例の抜擢であるのは間違いないよ」


 私も聞いたことのない話だった。国際交流が盛んになってきていて、交換留学とした行き来があるのは知っている。実際に静岡研究所にもアメリカとフランスからも研究員が留学してきている。でも、それに自分の名前が挙がっているとは思わなかった。


 正直、考えたこともなかった。
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