あなたと恋の始め方①
 そう切り出したのは高見主任で食事をしながら、研究所の話をしているときだった。さっきから、研究所の話はしているのに、これ以上何の報告なのだろう?でも、折戸さんをチラッと見て、ニッコリと笑うから何となく分かった気がした。二人が聞きたいのは小林さんとのこと。でも、二人に話すことなんかなかった。小林さんと私との間は本社営業一課の時と殆ど変ってない。


「研究所の報告は終わりましたが、何か足りないですか?」


「それは坂上さんが一番分かっているだろ。」


 折戸さんの方助けを求めるけど、助けてくれる気配はなく、私の方を微笑むだけ。ここでも尋問なのかと小さく溜め息が漏れた。


「小林さんのことですか?」


「それ以外にないだろ」


 やっぱりと思った。高見主任にしても折戸さんにしても小林さんは新人の頃から知っている可愛い部下でもあると同時に実の弟のように成長を見守っているのは知っている。でも、それは出来れば仕事だけにして欲しい。二人が『恋愛』について見守るだけで終わらないのも知っている。


「仲良くしてますよ。一緒に食事も行ってますし…。」


 私の声だけが座敷の中に小さく響く。語尾なんか、もう吸い込まれそう。この間の水曜日に初めて私の部屋に来て貰っただけで、それ以外は本社にいた時と同じように食事をしたり、買い物に行ったりするだけの仲だった。もちろん、二人が期待するような関係ではない。




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