白と黒、そして白濁

「10年前あいつの家族は波飛に殺された。波飛だけじゃない。ここにいるみんな、みんな家族を波飛に殺されたんだよ。あいつは傷が癒えないんだろう。なんせ、自分だけ生き残ったんだからね」

私は周りにいる男性たちを順番にゆっくりと一人一人見た。
某の話しを聞いて、みんな少し苦い表情になった。

ちょっと待って…自分だけ生き残った?
なら藤は?
そういえば、ここに着く前から藤の姿がない…
どこいったんだろう……

「藤に会ったか?」
「はい。途中まで着いてきていたのに…」
「ああ…心配すんな。あいつはそういうやつだ」
「はぁ…?」

「藤と鈴蘭は本当の兄弟じゃないんだ。あの事件の後、鈴蘭は気が狂った。毎日のように女を抱いた。あたしも抱かれた一人だよ。だが駄目だった。女じゃ心に空いた穴は埋まらない。それどころか、病気にもかかっちまって、毎日衰弱していく一方」

「そんな時に現れたのが藤…?」
「ああ。あいつは医者と民宿をやってんだ。あいつは鈴蘭の身体を回復させた。心も少しは回復させたが傷が癒えていない。鈴蘭は自分と同じ境遇の人を救いたいと、藤に弟子入りしたんだ。」

「でも鈴蘭は藤を兄ちゃんって…」
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