白と黒、そして白濁

「ああ…ふじ」
鈴蘭が藤に手をさしのべた。その手を藤はかたく握る。
「どうした!?何でも言え、水か?」
「一緒にいて……もう一人は……嫌」
「いる、いるぞ、ここに。だから頑張れ」

藤が鈴蘭を抱きしめた。
「藤、鈴蘭を治して!!!!!」
私は藤の袖を引っ張った。
「ああ。熱中症だ。水が必要だ」
「それならしょうがない。ほら、先へ行きなさい」
某がグランソワンから降りた。
「ああ、すまない」
藤はすぐさま鈴蘭を後ろから抱きしめるような形でグランソワンに乗り、砂漠の中を猛スピードで駆けていった。

「鈴蘭…大丈夫かなぁ」
「大丈夫だよ。藤兄ちゃんがついてるんだから」
心配する私に波飛は無邪気に微笑む。それを見て私も微笑む。

「そうね」
「そうだよ。あれがこれしきのことでくたばるはずがないよ。それより気をつけないといけないのはあたしたちさ。あの馬も水もないんだからね」
「そっか…」
某のもっともな話しに少し不安になる。

「大丈夫だよ。ゆっくり無理せずに行こう」
「そうね」
「ああ」
私と某が頷くと、私たちは歩き出した。
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