モバイバル・コード
「なぁ、電話帳ってどう使うんだ?」


 こうして何かを聞くのはオレ達、幼馴染の間じゃ普通だ。


「龍ちゃんさ、本当に使い方分からないんだね。僕の家でたまに見せたりしてるよね?」


「オレだって知りたくないわけじゃないっつーの。ただ操作が難しくて分からないんだよ。タッチの仕方とかよくわからないし」


 けらけらと笑う雷也を無視して、オレは画面を連打した。



『天は二物を与えず』



 そういうことわざがあるけど、全くの嘘だというのをオレは小学校の時に知った。


 少し茶色いウェーブがかかった髪。

 
 知性を感じさせる濃紺なセルフレームメガネ。


 その二つが雷也の中性的な顔にとても似合う。


 正直、男のオレから見ても同年代に思えない落ち着きを感じる。


 おまけに成績は常に1番目。


 バイトばかりで万年赤点気味のオレにとってはかけがえのない救世主だ。


 ちなみに地味に家は金持ち。これじゃあ『三物』だな。


 まぁ、少しお茶目なトコロがあるのが唯一の欠点か。


「だから、これが電話帳でここをタッチしてさ……」


 言葉を遮り、雷也が首をあげて、オレの背後に目を向けた。
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