モバイバル・コード
 オレ達3人は、駅前のベンチに腰掛けた。


 人混みをかき分けて黒いスーツを着た男が二人やって向かってきた。


 雰囲気で気づく……コイツらだ。


「チーム『RARA』のお三方で宜しかったでしょうか?」


 向かって右側のいかつい坊主頭が言う。


「そうだけど。管理局の人ですか?」


「はい。ではリーダーの方以外のお二人は、私達と一緒に来てください」


 今度は細身の男が話をした。その冷たい眼がオレ達の全身を差す。


「ちょっと、どういうことなんですか!? わたし達3人で戦うんですよね?」


 眉毛一つ動かさずに坊主頭が答えた。


「はい。3人で戦います。ですが、3人で協力して戦うと言っても、色々なルールをご用意しています。本日の種目は『チームリーダー』の方がお昼に戦って頂く種目です。

全チームとも共通のルールですので、チームリーダーが一人で『突破』します」


 坊主頭の単語が変わったのを聞き逃さない。


 『突破』って言ったよな、今。


「なっ…! そういう解釈もあったのか…僕の誤算だった…。3人チームだからと言って、一人が代表となる事を考えていなかった……」


 雷也の額に汗が浮かんだ。しかし、こんなもの不可抗力(ふかこうりょく)だ。


「雷也のせいじゃない、誰だって分からなかったはずだ。それに、全員同じルールならまだ希望はある。大丈夫、オレは生きて帰るよ」



「龍ちゃん、さよならなんて絶対に言わない…言わないから!! あたし、伝えたいことあるんだから……!」


 オレも聞きたい事がある、愛梨。


「ああ、行ってくる。というか、オレはここで待機か。二人共、大丈夫だから」


「ではお二人は私達に着いて来て下さい。ルール等は参加者10名はもちろん、全30名に同時に配信されます」


 細身の男が愛梨と雷也を連れて行く。


 最後に愛梨が振り返り、笑った。


 人混みに消されてしまったが、オレは胸に焼き付けた。
< 253 / 835 >

この作品をシェア

pagetop