モバイバル・コード
 オレは振り返らないで言い放った。


「愛梨、タオル一枚で出てきてなんのつもりだ。サービス精神旺盛なのは雷也の前だけにしてくれ」


「どうして分かったの!? 別にサービスのつもりじゃなくて、あたしはお風呂上りにすぐにお洋服着るの嫌いなんだよ。ちゃんと見えないようにしてるから大丈夫」


 この能天気さがオレと雷也にも欲しいよ。一番度胸がいいのは実は愛梨じゃないのか?


「あ、愛梨……風邪引くから服着なよ?」


「ちゃんと下着はつけてるもん! それより凄い事思いついちゃってさ、だから飛び出てきちゃったの!! ねぇ、聞いて聞いて!!」


「服着たら聞くよ。そろそろ……表にご飯食べに行って、そのまま2回戦に参加するか」


 さっきの結果のせいで、頭がぼーっとする……。


──『ブブッブブッブブッ』


 机の上に置いてあったオレの携帯が振動した。
 

 なんとなく誰からの連絡か読める。

 
「部屋で着替えてくるわ」


 流石にパーカー1枚じゃ寒いから一張羅(いっちょうら)のコートを持ってきておいて良かった。


 部屋に戻り、すぐに携帯を確認する。


──【メ ッ セ ー ジ】──
■AoI_82より■

【今時間あるかな?龍一、声が聞きたいな。会える?】
────────────

 女の子の誘いを断った事は人生で何回かある。主に愛梨だけど。


 だが、心から断りたくないと思ったのは今日が生まれて初めてだ。
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