溺愛宣誓

強制送還も覚悟して「ホラ、早く。」と言う声に恐る恐る目を開けてみてきょとんとした。


……洗面所?



「ホラ、早く手荒いうがいして!手洗いは最低一分。洗剤はそれ、うがい薬はこれ使って。後、手を洗った後の殺菌剤はコレ!あ。うがいはぶくぶくじゃなくてゴロゴロね。」

「えっ、あの…」

「早く!!!」

「ハイィッ!!」


言われた通り手を洗ってゴロゴロして―――

私が命令を成し遂げた頃、一旦洗面所から飛び出して行った織田さんがマスク姿で戻ってきた。



「あ……あの、織田さん…」


数秒後、私はマスクをかけ、ゴム手袋着用。

着てと言われて着用した百円均一っぽい薄手の雨合羽上下にゴーグル。

これ絶対お巡りさんに会ったら職質されると言った物々しい完全防護の井出達に。


茫然と立ち尽くす私に織田さんは、しゃっしゃっ、と私の頭からスプレーを吹きかける。


「ここに居るのは女なんかじゃないよ。女よりももっと恐ろしい風邪の菌が何千何百……一体どのくらいいるのか…」

「いや、でも…たかが風邪だし………」

「たかがじゃないだろう!もし万が一にもカノが病気になったりしたら俺は…俺は……」


うるっと涙で潤んだ切なげな瞳に、私の胸がズッキュンと打ち抜かれる。

いつも威風堂々としていて頼もしい限りの織田さんが、いつになく気弱で、それがまたなんというか…………


可愛過ぎですっ!!!



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