溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~

お酒の力も借りて、本音を漏らしてしまいたくなる。

『私、ハワイに行くあんたの恋愛相談なんて聞いてやれないよ? 私だって漸く恋ができるんだし』

『漸く?』

あ、墓穴を掘ったかもしれない。
私がこいつを好きなことは誰にも言えてないんだ。
そもそも好きになった時には、既に隣に彼女がいたんだよ。甲斐には。

そう思った時にはもう遅い?

いや、本当は気づいて欲しかったのかもしれない。私。

『俺、覚えてるよ。七帆(なほ)がバスケの試合が終わった後、負けて一人で泣いてたの。足の爪が剥がれてすっげ血が出てた』
『……そうだっけ。もう、忘れた』

ジョッキのビールが空になるのを甲斐はずっと見つめてくる。
あの可愛い彼女ならきっと、オシャレなワインやカクテルを飲むんだろうな。
そもそも、こんなおじさんが溢れて酔っ払いだらけで危険な場所なんて連れて来ないだろう。
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