溺愛クルーズ~偽フィアンセは英国紳士!?~
何メートルあるのか分からない壁の上で、命綱一本で色とりどりの石を掴んで登って行くジェイドさんをただただ見上げる。
朝日の浮かぶ中、そのジェイドさんの背中は、――やっぱり格好いい。
しなやかな無駄のない身体も、引き締まった筋肉も。
外国人だから筋肉の付き方も違うのかな。
私はあの身体に抱きかかえられてのかと思うと、何だか照れくさくて。
何だかとても切なくて、胸が痛かった。
目標まで登ったらしいジェイドさんが降りてくるのを凄いなーっと思いながら見ていたら、頭をよしよしと撫でられた。
「見惚れてる場合じゃないぞ。今日は部屋でゆっくりしておこう」
「……別に見惚れてないです。早く、ジェイドさんにお礼を言いたかっただけだし」
相変わらず素直じゃないし、可愛くないけれど。
そんな私でも、貴方が微笑んでくれると分かっているから甘えてしまうんだ。
「ジェイドさんこそ、ちゃんと寝たんですか? 朝からこんなハードなスポーツしちゃって」
「ボルダリングはそんなにハードじゃないよ。石の上に数字が貼っているから初心者はその番号を追っていけばいいし。それに、何故か落ちつかなくて」