怪盗ダイアモンド
もうここにいる皆は分かってるみたいだけど、改めて瀬川さんは彼を紹介した。
「私の双子の弟です。ここの館長でして」
道理で見覚えがある訳だ。
鏡に映したみたいに、二人はよく似てた。
瞳の色が違うけど、背丈も髪も体格も同じ。
「言い忘れていましたが、今回のデートに参加した理由は、弟の仕事ぶりを見たいという意図もあったんです」
「兄さん……私は兄さんの子供じゃないんだから、そこまでする必要ないだろ。授業参観みたいで私は嫌なんだが……」
館長さんが拗ねるように頬を膨らませる。
なんか可愛い……
見た目はそっくりだけど、館長さんの方が子供っぽいらしい。
館長さんは話題を元に戻した。
「あ、そうそう、この絵でしたよね。えっと、君は……」
「日ノ宮 音遠です。紅一さんの実習先の生徒である、この蝶羽ちゃんの彼氏です」
初対面の女の子が三人もいるから、誰が『蝶羽』か分からないだろうからと思ったのか、音遠くんは私の肩に手を置いた。
うーん、やっぱり偽装とはいえ、改めて彼氏って言われると、なんか照れる……
「珍しいですね、この絵は比較的人気が無いんですよ」
「そうなんですか?僕は素敵だと思うんですけどね」
音遠くんは、何で?という顔で周囲の顔色をうかがう。
「音遠くんて、趣味悪いねぇ〜」
いつの間にか隣に来た亜希乃が、私に耳打ちをする。
「……」
何とも言えないや。私は音遠くんと会って日が浅いし、こういう人だなんて知らなかったんだから。
「亜希乃、男子組はおしゃべりに夢中になってきたし、私達は先に行こ?館長さん居るから、はぐれても大丈夫でしょ」
「それもそーだね」
私達は水彩画のコーナーに向かった。