純情喫茶―恋する喫茶店―
「女店長にちょっくら叱責されたことがきっかけで、惚れたんですよ」

煙を吐きながら、谷木が言った。

「生意気でつかみどころがない女だなって思っていたら、気がついた時には惚れていた――よくあるパターンでしょ?」

そう言って同意を求めてきた谷木に、
「まあ…相手を思っていたら、惚れていたって言うことはありますけど」

朝倉は曖昧に返事をした。

「彼女目当てで何度も店に通ったんですけど、相手はなかなか見てくれなくて」

「それで、調査を?」

そう言った朝倉に、
「悪いと思っているんですよ、これでも。

あんたがわざわざ雑誌記者に化けてまで、調査してくれたことを」

谷木が笑ったので、朝倉もつられて笑った。
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