純情喫茶―恋する喫茶店―
「元々は喫茶店経営は亡きお父様の夢だったらしくて、姉弟たちはその意志を受け継いで経営を始めたと言っています」

手帳を見ながら言った朝倉に、
「そうか」

谷木は返事をすると、すでに暗くなった窓の外に目をやった。

「ところで、谷木さん」

朝倉に声をかけられた。

「何故私に、喫茶店の調査依頼を?」

そう聞いた朝倉に、
「――惚れたってヤツですよ」

谷木は呟くように答えた。

「惚れた、ですか?」

そう聞いてきた朝倉に、谷木はジーンズのポケットから煙草を1本だけ取り出すと火をつけた。
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