純情喫茶―恋する喫茶店―
そんな彼に、
「ご注文を言ってきただけですから」

マグカップにコーヒーを注ぎながら、玲奈は答えた。

「だろうね、弟に注文を言うだけだから時間はかからないもんな」

そう言った谷木に、ポットが手から離れそうになった。

「言ってたでしょ?

弟と2人で経営してるって」

そう言った谷木に、
「ああ、はい…」

玲奈は呟くように返事をするしかなかった。

彼にそのことを言った覚えなんて、全くなかった。

無意識であろうと何であろうと、言った覚えなんてないとはっきりと断言できる。
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