純情喫茶―恋する喫茶店―
「お待たせしました」

笙がサンドイッチを手に現れた。

谷木の姿を見た笙はピクリと眉をひそめた後、彼の前にサンドイッチを置いた。

「あなたでしたか、マダムが申していたお客様は」

笙がそう言って眼鏡越しから谷木をにらんだ。

「にらんでも勝負になりませんよ、ウエイターさん」

サンドイッチを口に入れながら谷木が言い返した。

「前に言いましたでしょ?

私とマダムがつきあっていても、嘘にはならないと」

そう言った笙に、
「つきあっている?

僕が聞いた話では姉弟2人で経営している店だと聞いたんですけど」

サラリと言い返した谷木に、笙は口をつぐんだ。
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