純情喫茶―恋する喫茶店―
「そんな手段を使って、店に何しようって言うんですか?」

もし谷木が芸能人じゃなかったら、自分は間違いなく彼を殴っていたことだろう。

こみあがりそうになった怒りをこらえながら、笙は谷木に聞いた。

「店を乗っ取るつもりはないですよ。

あんたたちの身元が知りたかったから調査を依頼した、それだけですよ」

「――身元を知っても、何も出ませんよ」

笙が呟くように谷木に言い返した。

「何も出なくても、知りたい人はいますよ。

特にあんたたちみたいな美人姉弟を知りたい人はたくさんいるだろうに」

「無駄ですよ、どんなにあなたたちが身元を調べても私たちが口を割らない限り無理でしょう」

そう言った笙に、今度は谷木が眉をひそめた。
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