タイガーハート
母親


部屋で一人、机に向かう。
机と言っても、食卓代わりにもなっている、炬燵だ。


質素な暮らしの祖父母の家。
自分の部屋には布団とタンスなど最低限のものしかない。

すると、呼鈴が鳴った。
台所から祖母が現れ、玄関へ小走りで向かう。

『はい、金屋でございます。

どちら様ですか?

…どなた?』


玄関から響いてくる声。
どうも、祖母の様子がおかしい。

続いて、扉を開ける音がした。
心配になり、立ち上がる。
玄関へ向かおうとすると、再び声がした。


『翔子?』

その瞬間、頭が真っ白になる。
翔子とは、俺の母の名前だ。


『翔子!入りなさい。
虎治もいるわ』


そのまま立ち尽くす。
今の入り口。母が姿を現す。

何年ぶりだろう。
久々に会う母は、とても小さく感じた。

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