俺様御曹司の悩殺プロポーズ
私は静かに首を横に振る。
そんなことをしてもらわなくても、
偽メールのアドレスと中村さんのスマホのアドレスが、別物だということはわかっている。
あの日、何とか遅刻せずに済んだ収録後に、ムカムカと腹が立ち、
『嫌がらせはやめて下さい!』
と返信したら、宛先不明で戻ってきてしまったもの。
偽メールのアドレスは、もうどこにも繋がらない……。
自分のスマホから私に宛ててメールを送ってみせると言った中村アナに、
風原さんは笑って答えた。
「その必要はありません。
偽メールのアドレスは、現在使用されていないので。
どうやら日野さんにメールを送り付ける為だけに設定されたアドレスのようですね。
その手口は捻りのない、実に単純なものでした。
あなたは、ひるリッチの生放送前にアドレスを変えて、放送中にメールを送信し、
番組終了後に、元のアドレスに戻した。それだけです」
「な、何の根拠が……」
「根拠ならありますよ。
社会部の上野さんという記者をご存知ですね?
あなたの同期入社のご友人です。
彼女はこんな話をしてくれました。
あの日、約束していた飲み会に行けなくなったので、その旨をあなたにメールで送信したら……
なぜか宛先不明で届かなかったと。
それが、ひるリッチの放送中のことです。
番組が終わっている15時頃に、試しにもう一度送信したら、今度は無事にメールが届いた……
ご友人がそう証言してくれました」