俺様御曹司の悩殺プロポーズ
車や腕時計の意外性に注意が逸れて、文句の言葉をしばし忘れていた。
風原さんは再び周囲に視線を巡らせ、誰にも見られていないことを確認してから、
後部席のドアを開けて私に言った。
「乗れよ。送ってやる」
「ほ?」
いや、いやいやいや。
送って欲しくて、ここまでついて来たわけじゃない。
ついて来た理由は、しっかり苦情を言いたかったから。
「乗らないですよ。
私をおもちゃにして遊ぶのはやめて下さいと、言いたかっただけで、
風原さんに送っていただく理由も、筋合いもないので……」
断っている途中で、彼の舌打ちを聞いた。
一見爽やかな瞳の奥に、意地悪で作為的な光が灯る。
それとほぼ同時に、彼が素早く動き……
あ!と思った時には、私達の距離がおかしなことになっていた。
なぜ私は、彼の腕の中にいるのか……?
白いワイシャツの衿と、ブルーのネクタイの結び目が、至近距離の目の前にあった。
背中と腰に腕が回され、ガッチリホールドされている。