俺様御曹司の悩殺プロポーズ
 


事件現場のVTRが流された後、画面はまたスタジオの風原涼を映した。



お腹が空いているはずなのに、私は箸を置いて、彼の声にうっとり聴き入っていた。




『男は25歳から30歳くらい。身長はおよそ165cm。

逃走した車は黒っぽい乗用車だということで、警察は殺人事件として行方を――』




風原涼の声が好きだった。


重くもなく軽くもなく、少し低めで伸びやかで、耳に気持ちいい。


何か考え事をしていても、自然に入り込んでくるその声に、たちまち心は奪われてしまう。



いつか彼がニュース原稿を読む声を、生で聞いてみたい……。



持ち帰ってきた地方女子アナ特番の台本を、テーブルの上に置いていた。


それを見て、小さな溜め息をつく。



司会者は有名男性芸人と、桜テレビ東京本社の人気女子アナ、佐川亜梨沙(サガワ アリサ)となっていた。


台本に風原涼の名前はない。



特番の出演は頑張ろうと思うけど、司会が憧れの風原涼なら、もっと張り切るのに……なんて。



テレビでは聞き心地抜群の素敵ボイスが、次のニュースを読み上げていた。



それを聞きながら、止めていた箸を動かし、鮭の塩焼きを口に入れる。



アナウンス業界の中心で活躍中の彼は、イチ地方女子アナの私なんかが近づけない遠い存在。



いつか生声を聞いてみたいと憧れはするけど、それは恋愛感情ではない。


だって、別世界の人に恋したところで、どうにもならないのだから。




―――……




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