桜の花が散る頃に
一章 ―さよならこの世界―
pattern 鏑木千紗
「お、鏑木様ではないですかーっ」
「人殺しが来たぞっ」
「人殺しはかえってくださぁあーい」
 私は、人殺しではない。
 しかし、死ぬはずだった場所で私は死ななかった。代わりに…
「すかした顔してんじゃねぇよっドブスっ」
「そーよっ」
「……すみません。畠山さん…」
 他人が何て言おうと私は人殺しではない。
 死ぬことばかりを考える毎日。
 鏑木千紗。
 それが私の名前。
 私は、この名前が「人殺し」と言ってくる人たちよりも大嫌いだ。
 鏑木美沙。生きていたら高校三年生。
 私には双子の姉がいた。
 同じ顔。同じ歳。同じくらいの体格。同じ趣味。にも関わらず性格は正反対だった。
 姉は明るくて笑顔の多い人だった。私の性格は本当に反対で、内向的なあまり笑う方ではなかった。
 母さんや父さんは、姉が大好きだった。いや。今も大好きだ。
 私なんか見てくれない。
 だから、似ているこの名前は嫌いだ。父さんや母さんも大嫌いだ。
「おはよう。鏑木さん」
「…お…ぉはょうござ…いま…」
 いつも声をかけてくれる[三神鈴]は、私を差別の目で見ない。普通に接してくれる。哀れみな目で見たりもしない。
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