ショータロー☆コンプレックス2
「喉の炎症を抑えるお薬、出しておきますからね」


言いながら、先生はカルテに何やらサラサラと書き込んだ。


……もしかして、これで診察は終わりなのだろうか?


てっきり他にも色々検査されると思ってたんだけど。


あまりにも呆気ない幕切れに、内心胸を撫で下ろしていると、そのタイミングを見計らっていたかのように辻谷が口を開いた。


「ここって、昔はもっと南側にあったんですよね?今は大きな道路になってしまっている辺りに」


「え?」


「だけどいつの間にか、こちらに移転されたんですね」


「ええ、そうなの。区画整理があってね。でも、昔病院があった場所なんて、良くご存知ねぇ。あの道路が広がったのって、もう20年近くも前の話なのに。あなた、ご近所さんじゃないわよね?」


「えっと、母の友達が昔この辺に住んでいた事があったらしくて、よく思い出話をしていたんですよー」


辻谷は陽気で無邪気な若者風に言葉を繋いだ。


「『慣れない土地で、一人暮らしで不安な思いをしていた時に、近所のお医者さんに親切にしていただいて、精神的にすごく助けられた』って」


「あ、分かった。その方は区画整理前に引っ越してしまったから、うちが移転した事は知らずに、昔の場所をあなた達に教えていたって訳ね」


さすがお医者さんだ。


その頭の回転の速さに、オレはすこぶる感動してしまった。
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