モテKingのターゲット
「周さん」
「………ん?」
「いつだったか、私が噂を煽る理由が知りたいって言いましたよね?」
「………ん」
「今なら、話せそうです」
本当は、今にも溢れそうなこの想いを伝える時に言おうと思っていた。
だけど、きっと……それを言ったら、この関係は終わってしまう。
そんな風に思えてならない。
だって、彼は『彼女』を作らないと有名だから。
私が気持ちを打ち明けた所で、それはきっと変わらないだろう。
だったら、少しでも本当の私を知って、見て、感じて貰いたい。
彼女がダメでも、少しでも近くにいたいから。
その後、私はこれまでの事を1つ1つ丁寧に言葉にした。
幼かった頃の話をした時は、さすがに涙も相まって。
でも、彼は茶化す事無く最後まで黙って聞いてくれた。
そして―――――。
「頑張ったな」
たった一言、声を漏らした。
そして、優しく頭を撫でてくれる。
そんな彼の優しさが嬉しくて、止まりかけた涙が再び溢れ出した。