いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。
「瑠希(るき)……っ」
瑠希は私の初めての彼氏で、もうすぐ付き合い始めて一年になる。
私は本当に瑠希が大好きで、告白も私からだった。
でも、そんなに大好きな瑠希のことも、私は忘れてしまうんだろうか。
そう思うと、心の中がもっと黒い何かで潰されていくような感じがした。
「現在の症状の進み具合から考えると、あと一年ほどで松岡さんの記憶の全てがなくなると考えられます」
「い、ちねん……」
「松岡さんの場合は原因不明の記憶障害なので、新たな症状が出るたびに病院へきてください」
あと一年。
あまりの短さに、ショックを隠しきれなかった。
でもここで泣き叫ぶわけにもいかず、私はその宣告にただコクンと頷くだけしかできなかった。