いつかすべてを忘れても、きみだけはずっと消えないで。


「……ふぅ」


ゆっくりと深呼吸をしてから自分のベッドに腰かけ、汗ばむ手でアドレス帳から瑠希の番号を探し出し、真ん中のボタンを押す。


───プルルル、プルルル。


瑠希を呼びだすコール音が、私の耳に大きく響く。


そしてコール音と同じくらい、私の心臓も大きく波打っていた。


『……もしもし、心咲か?』


コールから数秒して携帯から聞こえてきたのは、私の大好きな声。


「る、き………っ」


大好きな人を前にして、溢れ出してくるものを我慢できるほど、私は強くなかった。


電話の向こうで、瑠希が慌てているのが分かる。


< 15 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop